ストレスチェックの集団分析とは?仕事のストレス判定図の見方と10人未満の扱い

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要点:集団分析とは、ストレスチェックの個人結果を部や課などの一定規模の集団ごとに集計・分析し、職場のストレス要因や健康リスクを把握して職場環境の改善につなげる取組である。労働安全衛生規則第52条の14に基づく事業者の努力義務で、職業性ストレス簡易調査票を使う場合は「仕事のストレス判定図」を用いるのが適当とされています。判定図では全国平均を100とする健康リスクを読み取り、総合健康リスクが120を超える職場では仕事のストレスに関する問題が生じていることが多いとされます。受検者が10人を下回る集団の結果は、個人が特定されるおそれがあるため、原則として事業者に提供しません。

集団分析は義務?誰が行う?

事業者は、ストレスチェックを実施した医師等(実施者)に、結果を一定規模の集団ごとに集計・分析させるよう努めなければなりません(規則第52条の14第1項)。分析結果を踏まえ、必要に応じて集団の労働者の心理的な負担を軽減する措置を講じることも努力義務です(同条第2項)。集団ごとの結果は個人の結果を特定できないため、原則として労働者の同意がなくても実施者から事業者に提供できます。

「一定規模の集団」は、職場環境を共有し、業務内容に一定のまとまりがある部や課などで、具体的な単位は事業者が業務の実態に応じて決めます。集団分析の結果は、経年変化を見るためにも事業者が5年間保存することが望ましいとされています。

仕事のストレス判定図とは?

仕事のストレス判定図は、集団の仕事のストレス要因の程度と、それが健康に与える影響の大きさを評価する方法で、次の2つの図からなります。

判定図横軸縦軸読み取る健康リスク
量-コントロール判定図仕事の量的負担仕事のコントロール(裁量権)健康リスクA
職場の支援判定図上司の支援同僚の支援健康リスクB

使う尺度は、職業性ストレス簡易調査票の「仕事の量的負担」(A1〜A3)、「コントロール」(A8〜A10)、「上司支援」(C1・C4・C7)、「同僚支援」(C2・C5・C8)の4尺度(各3問、計12問)です。この12問は23項目の簡略版にも含まれています。

判定図の作り方

  1. 回答者ごとに4尺度の得点を計算します。各項目は「そうだ=4点、まあそうだ=3点、ややちがう=2点、ちがう=1点」、「非常に=4点、かなり=3点、多少=2点、全くない=1点」として合計します。
  2. 集団について、4つの得点の平均値を求めます。
  3. 平均値を判定図に打点し、全国平均と比べます。
  4. 図の斜めの線から健康リスクA・Bを読み取り、総合健康リスクを計算します。

総合健康リスクの計算

総合健康リスク = 健康リスクA × 健康リスクB ÷ 100

健康リスクは標準集団(全国平均)を100とした値です。たとえばある集団の位置が健康リスク120の線上にあれば、仕事のストレス要因から予想される疾病休業などの健康問題が起きる可能性が、全国平均と比べて20%増えていると判断できます。これまでの調査事例では、健康リスクが120を超えている場合には何らかの仕事のストレスに関する問題が職場で生じていることが多いとされています。

マニュアルの記入例

実施マニュアルには、20人の職場(経理課)の記入例が載っています。

尺度集団の平均点
仕事の量的負担8.5
仕事のコントロール6.4
上司の支援6.0
同僚の支援8.8

この例では、量-コントロール判定図から健康リスクAが108、職場の支援判定図から健康リスクBが112と読み取れ、総合健康リスクは108×112÷100で約121になります。仕事のストレスにより、健康リスクが通常より20%程度高いと推定される職場です。

性別の情報がない場合は?

判定図は男女別に用意されています。性別を調査しない場合や、男女に分けると人数が少なくなる場合は、男女を区別せず男性の判定図を使います。ただし、女性のデータを男性の判定図に当てはめると、量的負担とコントロールによる健康リスクがやや過大に評価される可能性があります。

判定図を見るときの注意

判定図が評価しているのは仕事のストレスの4つの側面だけです。健康リスクは1つの指標として参考にし、健康診断データの集計、職場巡視、労働者や上司からの聞き取りなども合わせて総合的に評価することが望ましいとされています。判定図に使わない尺度も集団の平均を全国平均と比べることで、より詳しい特徴をつかめます。

10人未満の集団はどう扱う?

  • 集計・分析の単位が10人を下回る場合は、個人が特定されるおそれがあるため、原則として対象となる労働者全員の同意がない限り、結果を事業者に提供してはいけません。
  • 10人は在籍者数ではなく、実際の受検者数(有効なデータ数)で数えます。在籍10人以上でも受検者が10人未満なら提供できないため、より大きな集団で集計するなどの工夫をします。
  • 例外として、57項目の合計点の平均値だけを求める方法や、仕事のストレス判定図を用いる方法など、個人の特定につながらない方法であれば10人未満でも同意なく提供できるとされています。ただし、極端に少人数の集団を対象にすることは不適切で、手法と集団の規模は衛生委員会等で事前に審議しておく必要があります。
  • 小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアルは、自社で集計する場合について、10人未満の事業場や10人未満の集団単位では原則として集団分析を実施しないよう求めています。

2026年6月30日に公布された省令改正(2027年4月1日施行)では、規則第52条の14第1項に「特定の個人を識別することができない方法で」という文言が加わりました。通達によると、これは従来の解釈を明文化したもので運用は変わらず、個人を識別できる方法での集団分析は努力義務を果たしたことにならないうえ、プライバシー保護の観点から許されないとされています。

結果の共有範囲にも注意

集団分析の結果は、その集団の管理者にとっては事業場内での評価につながり得る情報です。無制限に共有すると管理者に不利益が生じるおそれがあるため、事業場内で制限なく共有してはならないとされています。集計の方法、結果の共有範囲、利用方法は、衛生委員会等で審議して社内規程に定めておきます(実施規程テンプレート)。

集団分析を職場環境の改善にどう活かす?

実施マニュアルは、職場環境等の改善を次の5つのステップで進める方法を示しています。

  1. 体制づくり:事業者が方針を表明し、衛生委員会等で目的・体制・進め方を決めます。問題を指摘する取組ではなく、問題を解決する取組であることを明確にします。
  2. 職場環境等の評価:判定図などの集団分析に、職場巡視や聞き取りの情報を合わせて評価します。
  3. 改善計画の立案:良好事例を集め、労働者が参加できるように工夫し、作業量や人間関係だけでなく幅広い職場環境に目を配ります。
  4. 対策の実施:衛生委員会や職場の会合で進捗を定期的に確認します。
  5. 効果評価と見直し:計画どおり実施できたか(プロセス)と、翌年のストレスチェックの集団分析などの指標が改善したか(アウトカム)を評価します。

改善策を考えるツールとして、職場環境改善の好事例を6領域30項目にまとめた「職場環境改善のためのヒント集(メンタルヘルスアクションチェックリスト)」や、45項目で労働者の改善要望を把握する「メンタルヘルス改善意識調査票(MIRROR)」が紹介されています。進め方には、事業者や衛生委員会が行う方法、管理監督者が行う方法、従業員参加型の方法があり、従業員参加型の職場環境改善が最も効果があるとされています。

Open Stress Check での集団分析と、個人を特定させない工夫

Open Stress Check は、マニュアルの考え方に沿いつつ、次のルールをすべてサーバー側で強制しています。

  • 締め切り後だけ表示:実施期間中に事業者が見られるのは受検率だけです。集団分析は、実施回を締めた後に固定したデータ(スナップショット)でだけ表示します。
  • 10人未満は表示しない:判定図を含め、受検者が10人未満の集団の結果は表示しません。マニュアル上の例外よりも厳しい運用です。
  • 引き算による特定を防ぐ:全体から表示中の集団を引いた残りが1〜9人になる場合は、さらに別の集団も非表示にします。
  • クロス集計の制限:クロス集計は、すべてのセルが10人以上のときだけ表示します。任意の条件で絞り込むフィルタは用意していません。
  • 性別は既定で尋ねない:性別を尋ねない実施回では、マニュアルに沿って男性用の判定図で計算します。

表示するのは尺度ごとの平均と仕事のストレス判定図です。部署別の分析と前年との比較は有料プランの機能です(料金)。

出典