ストレスチェック実施規程のテンプレート|衛生委員会で決める事項と、仮名方式で使える規程ひな形
要点:ストレスチェック実施規程とは、衛生委員会等での調査審議の結果を踏まえて、事業場のストレスチェック制度の実施体制、実施方法、結果の取扱い、不利益な取扱いの防止などを定める社内規程である。ストレスチェック指針は、事業者が規程を定め、あらかじめ労働者に周知することを求めています。このページでは、衛生委員会で審議すべき11の事項の一覧と、厚生労働省の規程例をもとに Open Stress Check の受検コードを使った仮名方式の条文を加えたひな形を掲載します。ひな形は一例なので、実施者の意見を聴き、事業場の実態に合わせて修正してから使ってください。
実施規程はなぜ必要?
労働安全衛生規則第22条は、衛生委員会の付議事項に「労働者の精神的健康の保持増進を図るための対策の樹立に関すること」を含めています。ストレスチェック指針は、この調査審議にストレスチェック制度の実施方法などを含め、その結果を踏まえて規程を定め、労働者に周知するよう求めています。個人の結果を事業者に提供するための同意は一人ひとりから取る必要があり、衛生委員会での合議による包括的な同意は認められない点にも注意します。
衛生委員会の議事は、開催のたびに概要を労働者に周知し、重要なものの記録を3年間保存します(規則第23条)。常時50人未満で衛生委員会がない事業場は、規則第23条の2に基づく関係労働者の意見を聴く機会を活用し、規程の変更も関係労働者の意見を聴いて行います(50人未満の義務化)。
衛生委員会で調査審議する事項の一覧
指針が示す調査審議の事項は次の11項目です。
| 事項 | 主に決める内容 |
|---|---|
| 1. 制度の目的の周知方法 | 一次予防が目的で、不調者の発見を一義的な目的としないことの周知方法 |
| 2. 実施体制 | 実施者、共同実施者・実施代表者、実施事務従事者の選任。外部委託する場合は委託先の実施者等を契約で明示 |
| 3. 実施方法 | 調査票と媒体、ストレスの程度の評価方法と高ストレス者の選定基準、実施頻度・時期・対象者、面接指導の申出方法、面接指導の実施場所など |
| 4. 集団ごとの集計・分析の方法 | 集計・分析の手法、対象とする集団の規模 |
| 5. 受検の有無の情報の取扱い | 事業者による受検の有無の把握方法、受検勧奨の方法 |
| 6. 結果の記録の保存方法 | 保存を担当する実施事務従事者、保存場所と期間、実施者等以外に閲覧されないためのセキュリティ |
| 7. 結果の利用目的と利用方法 | 本人への通知方法、面接指導の申出の勧奨方法、結果の共有方法と範囲、事業者への提供の同意の取得方法、提供する情報の範囲、集団分析結果の活用方法 |
| 8. 情報の開示、訂正、追加及び削除の方法 | 開示等の手続き、担当者の秘密の保持 |
| 9. 情報の取扱いに関する苦情の処理方法 | 苦情の窓口(外部に設ける場合の連携体制) |
| 10. 受検しないことを選択できること | 受検義務はないが全員の受検が望ましいという趣旨の周知方法 |
| 11. 不利益な取扱いの防止 | 禁止される不利益な取扱いの周知方法 |
実施後には、実施状況やそれを踏まえた改善点を審議し、次回に活かします。
仮名方式で実施する場合に特に審議しておきたい点
Open Stress Check の仮名方式は、会社が受検者を特定する情報を受け取らない一方、実施者は受検コードの単位で個人の結果を確認できる方式です。厚生労働省の資料には、完全に匿名で法定のストレスチェックを行うことを明示的に認めた記述は見当たりません。仮名方式を採る場合は、次の点を実施者の意見を聴いて審議し、議事録と規程に残しておくことをおすすめします。
- 受検の有無の把握:会社は個々の社員の受検の有無を把握しないため、受検勧奨は全員向けに行うこと。
- 結果の通知と勧奨:結果は受検直後に実施者名で画面に表示されること。社員に保存用URLの保存や印刷をしてもらうこと。実施者は氏名がわからず個別に連絡できないため、全員の結果を確認した後の再勧奨の方法を決めておくこと。
- 面接指導の申出:照合コード入りの申出票を使うこと、申出をもって結果の提供に同意したものとみなすことを、事前に周知すること。
- 受検コードの配布:コードと氏名の対応表を作らないこと、誰にどのコードを渡したか記録しない配り方、紛失時の再交付の方法。
- 重複受検の防止:1人1コードで配ること。共有リンクは重複の防止が弱いため、使う場合は上限件数と締切日を決めること。
- 集団の単位:部署リストの粒度と、受検者10人未満の集団は表示されないこと。
- 記録の保存:個人の結果は実施者の記録として5年間保存されること。氏名を含む面接指導の記録は会社が別途保存すること。
ストレスチェック制度実施規程(ひな形)
以下のひな形は、厚生労働省「ストレスチェック制度実施マニュアル」の「ストレスチェック制度実施規程(例)」と「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」の「ストレスチェック制度実施規程(モデル例)」を参考に、Open Stress Check による仮名方式の条文を加えて編集・加工したものです。「〇〇」の部分は事業場に合わせて記入してください。
第1章 総則
第1条(目的) この規程は、労働安全衛生法第66条の10の規定に基づくストレスチェック制度を株式会社〇〇(以下「会社」という。)において実施するに当たり、その実施方法等を定めるものである。
2 ストレスチェック制度の実施方法等については、この規程に定めるほか、労働安全衛生法その他の法令の定めによる。
第2条(規程の変更及び周知) 会社がこの規程を変更する場合は、衛生委員会において調査審議を行い、その結果に基づいて変更する。(常時50人未満の事業場の場合:「関係労働者の意見を聴き、その結果に基づいて変更する。」)
2 会社は、規程の写しを社員に配布し、又は社内掲示板に掲載することにより、適用対象となる全ての社員に規程を周知する。
第3条(適用範囲) この規程は、会社の〇〇事業場に勤務する正社員、契約社員及びパート・アルバイト社員に適用する。
第4条(制度の趣旨等の周知) 会社は、次の内容を社員に周知する。
- 一 ストレスチェック制度は、社員自身のストレスへの気付き及びその対処の支援並びに職場環境の改善を通じて、メンタルヘルス不調となることを未然に防止する一次予防を目的としており、メンタルヘルス不調者の発見を一義的な目的とはしないこと。
- 二 社員にストレスチェックを受ける義務はないが、治療中などの特別な事情がない限り、全ての社員が受けることが望ましいこと。
- 三 ストレスチェックは、会社が受検者を特定する情報を受け取らない方法(以下「仮名方式」という。)で行い、結果は実施者から直接本人に通知され、本人の同意なく会社が結果を入手することはないこと。したがって、ありのままに回答することが重要であること。
- 四 本人が面接指導を申し出た場合に会社が入手した結果は、本人の健康管理の目的のために使用し、それ以外の目的に利用しないこと。
第2章 実施体制
第5条(制度担当者) ストレスチェック制度の実施計画の策定、実施者との連絡調整及び実施の管理等の実務を担当する制度担当者は、〇〇課職員とする。
2 制度担当者、第6条の実施者、第7条の実施事務従事者及び第8条の面接指導を行う医師の氏名は、社内掲示板に掲載する等の方法により社員に周知する。変更があった場合も同様とする。
第6条(実施者) ストレスチェックの実施者は、〇〇(例:会社の産業医〇〇及び保健師〇〇)とし、〇〇を実施代表者とする。
2 実施者の氏名及び資格は、受検画面及び結果画面に表示する。
第7条(実施事務従事者) 実施者の指示のもと、〇〇を実施事務従事者とし、ストレスチェックの実施日程の調整、受検コードの配布準備等の事務を担当させる。
2 社員の解雇、昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者は、ストレスチェックの実施の事務のうち社員の健康情報を取り扱う事務に従事しない。
第8条(面接指導を行う医師) ストレスチェックの結果に基づく面接指導は、〇〇(例:会社の産業医/地域産業保健センターの医師)が実施する。
第9条(利用するシステム) ストレスチェックの受検、結果の通知、結果の記録の保存及び集団ごとの集計・分析には、Webサービス「Open Stress Check」を利用する。
2 Open Stress Check において個人のストレスチェック結果を閲覧する権限は実施者に限り、会社の管理者の権限を持つ者には付与しない。会社の管理者の権限を持ったことがある者は、実施者の権限を持たない。
第3章 ストレスチェック
第10条(実施時期) ストレスチェックは、毎年〇月から〇月の間に、〇週間程度の実施期間を定めて実施する。
第11条(対象者) ストレスチェックは、会社が常時使用する全ての社員を対象に実施する。
2 実施期間中に出張等の業務上の都合により受検できなかった社員には、別途期間を設定して実施する。
3 実施期間に休職していた社員のうち、休職期間が1か月以上の社員は対象外とする。
第12条(調査票及び評価方法) ストレスチェックは、厚生労働省「職業性ストレス簡易調査票」(57項目)を用いて行う。
2 高ストレス者の選定は、ストレスチェック制度実施マニュアルの評価基準の例(その1)に準拠し、次のいずれかを満たす者とする。
- ① 「心身のストレス反応」(29項目)の合計点数が77点以上である者
- ② 「仕事のストレス要因」(17項目)及び「周囲のサポート」(9項目)を合算した合計点数が76点以上であって、かつ「心身のストレス反応」(29項目)の合計点数が63点以上の者
3 実施者は、高ストレス者を含む全ての受検者の結果を確認し、医師による面接指導を受ける必要があるか否かを判断する。
第13条(受検コードの配布) 会社は、Open Stress Check で発行した受検コードを、対象となる社員1人につき1つ配布する。
2 会社及び配布に携わる者は、受検コードと社員の氏名その他社員を特定できる情報との対応表を作成せず、誰にどの受検コードを渡したかを記録しない。
3 受検コードを紛失した社員には、新たな受検コードを交付する。
4 社員は、受検コードを他人に渡し、又は他人の受検コードで受検してはならない。
第14条(受検の方法) 社員は、実施期間中に、受検コードを用いてOpen Stress Check で受検するよう努める。周囲を気にせず回答できるよう、社員本人のスマートフォン等での受検を認める。
2 ストレスチェックを受けるのに要する時間は、業務時間として取り扱い、管理者は社員が業務時間中に受検できるよう配慮する。
第15条(受検の勧奨) 会社は、実施期間中に受検率を確認し、対象となる全ての社員に対して受検を勧奨する。会社は、個々の社員の受検の有無を把握しない。
第16条(結果の通知) ストレスチェックの結果は、受検後直ちに、Open Stress Check の結果画面に実施者名で表示することにより本人に通知する。通知には、個人のストレスプロフィール、高ストレスに該当するか否か、面接指導の対象か否か、セルフケアの助言、面接指導の申出方法及び相談窓口を含める。
2 社員は、結果の保存用URLを保存し、又は結果を印刷して保管する。
3 実施者が第12条第3項の確認を行った後に、面接指導の対象者に改めて申出を勧奨する方法は、衛生委員会で別に定める。
第17条(会社への結果の提供) 会社は、社員個人のストレスチェック結果の提供を求めない。
2 社員が第18条により面接指導を申し出た場合は、ストレスチェック結果を会社に提供することに同意したものとみなし、会社は照合コードにより当該社員の結果を確認することができる。
第4章 医師による面接指導
第18条(申出の方法) 面接指導の対象と判定された社員が面接指導を希望する場合は、結果画面から申出を行い、印刷した照合コード入りの申出票を、結果の通知を受けてから〇日以内に〇〇(申出窓口)に提出する。
2 会社は、申出の記録を5年間保存する。
第19条(面接指導の実施) 面接指導の実施日時及び場所は、制度担当者が面接指導を行う医師と調整して本人に通知し、申出票の提出からおおむね30日以内に設定する。通知に当たっては、第三者に面接指導の対象者であることが知られないよう配慮する。
2 面接指導を受けるのに要する時間は、業務時間として取り扱う。
第20条(医師の意見聴取及び措置) 会社は、面接指導が終了してから遅くとも30日以内に、面接指導を行った医師から、就業上の措置の必要性及びその内容について意見を聴く。
2 会社は、就業上の措置を講じる場合は、あらかじめ本人の意見を聴き、十分な話し合いを通じて本人の了解が得られるよう努める。
第21条(面接指導の記録) 実施者は、面接指導が行われたことをOpen Stress Check に記録する。
2 会社は、面接指導を行った医師から提出された面接指導結果報告書兼意見書を、〇〇部門において5年間保存し、第三者に閲覧されないよう管理する。
第5章 集団ごとの集計・分析
第22条(対象集団) 集団ごとの集計・分析は、事業場全体及び〇〇(例:部)の単位で行う。受検者が10人未満の集団の結果は、会社に提供しない。
第23条(方法及び利用) 集団ごとの集計・分析は、仕事のストレス判定図を用いて行い、会社は実施期間の終了後に結果の提供を受ける。
2 集計・分析の結果は、〇〇部門及び衛生委員会で共有し、職場環境の改善に活用する。部ごとの結果は当該部の管理者に提供するが、管理者の人事評価には用いない。
第6章 記録の保存と情報管理
第24条(結果の記録の保存) 個人のストレスチェック結果の記録は、実施者の管理のもと、Open Stress Check において5年間保存する。会社は、Open Stress Check の権限の管理その他記録が適切に保存されるための措置を講じる。
2 社員が結果の保存用URLを無効化した場合も、前項の記録は保存期間の満了まで保存される。
第25条(守秘義務) 実施者、実施事務従事者及び面接指導の申出の受付に携わる者は、職務上知り得た社員の秘密を他人に漏らしてはならない。
第7章 情報の開示及び苦情処理
第26条(開示等の手続き) 社員は、ストレスチェック制度に関する情報の開示、訂正、追加又は削除を求める場合は、〇〇課に申し出る。仮名方式のため、本人の結果の特定には照合コードを用いる。
第27条(苦情の申立て) 社員は、ストレスチェック制度に関する情報の取扱いについて苦情がある場合は、〇〇課に申し立てることができる。
第8章 不利益な取扱いの防止
第28条(会社が行わない行為) 会社は、ストレスチェック制度に関して、次の行為を行わない。
- 一 面接指導の申出を行った社員に対して、申出を行ったことを理由として不利益な取扱いを行うこと。
- 二 ストレスチェックを受けない社員に対して、受けないことを理由として不利益な取扱いを行うこと。
- 三 ストレスチェック結果を会社に提供することに同意しない社員に対して、同意しないことを理由として不利益な取扱いを行うこと。
- 四 面接指導の対象とされたにもかかわらず申出を行わない社員に対して、申出を行わないことを理由として不利益な取扱いを行うこと。
- 五 面接指導を行った医師から意見を聴取する等の法令上の手順を踏まずに、不利益な取扱いを行うこと。
- 六 医師の意見とその内容・程度が著しく異なる等、法令上の要件を満たさない内容の不利益な取扱いを行うこと。
- 七 面接指導の結果を理由として、解雇、期間を定めて雇用される社員の契約の不更新、退職勧奨、不当な動機・目的による配置転換又は職位の変更、その他労働関係法令に違反する措置を講じること。
附則
この規程は、〇〇年〇月〇日から施行する。
ひな形を使うときの注意
- 実施者の意見を聴き、衛生委員会等で審議したうえで確定してください。
- 高ストレス者の選定基準を素点換算表方式にする場合は、第12条第2項を差し替え、性別の回答が必要になることを周知してください(選定基準の解説)。
- 派遣労働者を集団分析の対象に含める場合は、派遣元との取り決めを行い、適用範囲に追記してください。
- このひな形は法的助言ではありません。必要に応じて、産業医や社会保険労務士などの専門家に確認してください。