50人未満の事業場もストレスチェックが義務に|2028年4月1日施行の内容と準備チェックリスト
要点:50人未満の事業場のストレスチェック義務化とは、2025年5月14日に公布された改正労働安全衛生法(令和7年法律第33号)により、これまで努力義務だった労働者数50人未満の事業場にもストレスチェックの実施が義務付けられることである。施行日は2028年4月1日です。実施、結果の本人への通知、申出があった人への医師の面接指導は義務になりますが、労働基準監督署への報告は不要です。厚生労働省は2026年2月25日に「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」を公表し、プライバシー保護の観点から外部機関への委託を推奨しています。
50人未満の事業場は、いつから何が義務になる?
ストレスチェックは2015年から常時50人以上の事業場に義務付けられ、50人未満の事業場は「当分の間」努力義務とされてきました。改正法により、2028年4月1日からは事業場の規模にかかわらず義務になります。
| 項目 | 2028年4月1日以降の50人未満の事業場 |
|---|---|
| ストレスチェックの実施(1年以内ごとに1回) | 義務 |
| 実施者から本人への結果の通知 | 義務 |
| 申出があった人への医師による面接指導 | 義務 |
| 面接指導後の医師からの意見聴取、就業上の措置 | 義務 |
| 集団ごとの集計・分析と職場環境の改善 | 努力義務(規模にかかわらず) |
| 労働基準監督署への実施状況の報告 | 不要 |
報告が必要かどうかの基準になる「常時使用している労働者が50人以上」は、ストレスチェックの対象者とは数え方が違います。短時間のアルバイトやパートタイム労働者、派遣先の派遣労働者も、継続して常態として使用していれば人数に含めます。対象者が50人未満でも報告が必要になる場合があるので注意しましょう。
対象になる労働者は?
対象は、一般定期健康診断と同じ「常時使用する労働者」です。期間の定めのない契約(1年以上使用される見込みの人などを含む)で、週の労働時間が通常の労働者の4分の3以上の人が当たり、契約の名称や国籍は関係ありません。派遣労働者のストレスチェックは派遣元に実施義務があります。労働者に受検の義務はありませんが、できるだけ全員が受けることが望まれます。
小規模事業場マニュアルのポイントは?
1. 外部機関への委託が推奨されている
50人未満の事業場では、原則として外部機関(健診機関など)にストレスチェックの実施を委託することが推奨されています。個人の結果などの健康情報は外部機関の中で扱い、事業場内では扱わない体制です。事業場内では、委託先との連絡調整や実施計画を担う「実務担当者」を指名します。実務担当者は健康情報を扱わないため、人事権のある人でもかまいません。労働者数10人以上50人未満の事業場では衛生推進者または安全衛生推進者を、10人未満の事業場では事業者自身が実務を担うことが考えられます。
2. 衛生委員会の代わりに関係労働者の意見を聴く
50人未満の事業場には衛生委員会の設置義務がないため、労働安全衛生規則第23条の2に基づく「関係労働者の意見を聴く機会」を活用します。会議体でなくてもよく、朝礼や定例ミーティングを使う、社内ルールの案を示して意見を募るといった方法が例示されています。
3. 社内ルールを作って周知する
社内ルールには、実施体制、実施方法、記録の保存、情報管理、情報の開示・訂正等と苦情処理、不利益な取扱いの防止を定めることが望まれます。マニュアルの巻末には「ストレスチェック制度実施規程(モデル例)」があります。Open Stress Check の実施規程テンプレートも参考にしてください。
4. 委託先には「サービス内容事前説明書」を出してもらう
委託先を選ぶ前に、実施体制、実施方法、料金体系、面接指導、情報管理について、外部機関に「サービス内容事前説明書」(マニュアル巻末にモデル例あり)を作成してもらい確認します。実施者や事務スタッフ、システム提供、データ保管など実施に欠かせない費用は、原則として基本料金に含まれているのが標準と考えられるとされています。
5. 面接指導は地域産業保健センターを無料で使える
50人未満の事業場は、最寄りの地域産業保健センター(地産保)に医師の面接指導を無料で依頼できます。地産保は独立行政法人労働者健康安全機構が全国350か所(おおむね労働基準監督署単位)に設置しています。ただし、地産保はストレスチェック自体は実施しておらず、登録産業医にストレスチェックの実施者を依頼することもできません。
6. 調査票は57項目が推奨
調査票は職業性ストレス簡易調査票(57項目)が推奨されています。簡略版(23項目)も使えますが、集団分析が詳細にできない点に留意が必要です(57項目の解説)。
7. 自社で実施する場合は特に慎重に
外部委託せず自社で実施することもできますが、実施者や実施事務従事者を社内で選び、人事権のある人(社長、人事部長など)は実施の事務に従事できません。小規模な職場ほど人間関係が近く、「会社に結果を知られるのでは」という不安が生じやすいため、厳格な情報管理と慎重な運用が求められます。
10人未満の事業場や集団の分析はどうする?
集団分析の結果は、集計の単位が10人(在籍者数ではなく実際の受検者数)を下回る場合、個人が特定されるおそれがあるため、原則として事業者が提供を受けてはいけません。小規模事業場マニュアルは、自社で集計する場合について、10人未満の事業場や10人以上の事業場の中の10人未満の集団では、原則として集団分析を実施しないよう求めています。
従来のマニュアルやQ&Aでは、「仕事のストレス判定図」や評価点の総計の平均だけを求めるなど、個人の特定につながらない方法であれば10人未満でも集計できるとしつつ、極端に少人数の集団を対象にすることは不適切としています。2027年4月1日に施行される省令改正で、集団分析は「特定の個人を識別することができない方法で」行うことが明文化されました(従来の解釈を明文化したもので、運用は変わりません)。
集団分析ができない規模でも、職場環境の改善はできます。実施マニュアルには、従業員8人の会社で集団分析の結果は事業場に報告せず、外部の産業保健スタッフの支援で従業員参加型のグループワークを行い、工具置き場を改善した事例が紹介されています。
Open Stress Check を使う場合の考え方
Open Stress Check は、受検者を特定する情報を受け取らない仮名方式で、ストレスチェックの実施を支援するシステムです。事業者が見られるのは受検率と、締め切り後の集団分析(10人未満の集団は表示しません)で、個人の結果は招待した実施者だけが閲覧できます(面接指導を申し出た人の結果を除く)。事業場内で個人の健康情報を扱わないというマニュアルの考え方に沿った使い方ができます。
ただし、Open Stress Check は実施者(医師・保健師など)を提供しません。委託先の外部機関や契約する産業医・保健師などに実施者として参加してもらい、面接指導の依頼先(地産保など)もあらかじめ決めておく必要があります。直近365日の受検者が20人までなら無料で使えます(料金)。
今からできる準備チェックリスト
- 事業場ごとの常時使用する労働者数を確認し、報告が必要な規模かどうかを確かめる
- ストレスチェックの対象者(常時使用する労働者)の範囲を確認する
- 事業者としての方針を決め、従業員に表明する
- 実務担当者を決める(衛生推進者・安全衛生推進者など)
- 関係労働者の意見を聴く機会を用意する
- 委託先の候補からサービス内容事前説明書を出してもらい、比較する
- 実施者(医師・保健師など)を確保する
- 面接指導の依頼先を決める(地域産業保健センターの利用も検討)
- 調査票(57項目または23項目)と高ストレス者の選定方法を決める
- 年1回の実施時期を決める
- 社内ルール(実施規程)を作り、周知する
- 面接指導以外の相談窓口の案内方法を決める
- 集団分析の単位(受検者10人以上)と、結果の共有範囲を決める
- 面接指導結果の記録などを5年間保存する方法を決める
- 施行前に一度試しに実施し、運用上の課題を洗い出す